祭りのあと

3月6日は、『テイルズ オブ リーディングライブ エターニア編』本番でした。


『テイルズ オブ エターニア(以下TOE)』という2000年に発売されたゲームが、20年以上もの時を経て、オンライン開催の朗読劇舞台となったのです。

私は当時、ナムコ(まだバンダイナムコではなかった……)というゲーム会社の社員として、このゲームのシナリオを担当しました。

生まれてはじめて担当したゲームシナリオであり、この作品で、自分の書いたものが【商品】として世の中に広く流通するはじめての体験をしたのです。

そんなご縁もあり、今回の朗読劇の脚本を担当させていただくことになりました。


ここ数年は小説ばかり書いていたので、シナリオを書く筋肉を鍛え直すところからの出発です。

(当たり前だけど、小説とシナリオは全然違う!)

さらに、TOEの作り込まれた世界観、設定などを思い出す作業も、地味に大変でした。

当時の開発資料は紛失しているものも多く、攻略本に大変お世話になった次第です。

何もかも網羅した、凶器になるくらい分厚い、昔の攻略本。アレはこの先、時が経てば経つほど文字通りの【バイブル】となっていくのではないでしょうか。


そんなふうにわりと苦戦するなか、キャラクターだけは頭の中から消えていませんでした。

さすが、ゲーム製作期間の最初から最後まで(3年近く?)ずっと一緒に生きたキャラクター達だけあります。

20年経ってもすぐに、こういう時は誰が何を話すか、どういう行動を取るか、目を瞑ってでもわかりました。

これは心強かったなあ。

リッド、ファラ、キール、メルディ、フォッグ、チャット……キミらとは、たぶん墓場までいっしょにいくよ。


そんなキャラクターに息を吹き込む声優さん達とも、20数年ぶりに再会しました。

皆様、相変わらず声が麗しいのはもちろんのこと、演技力を含めた技術はますます磨かれ、冴え渡っておりました。

私が言うのも、おこがましいですよね。失礼しました。

でもホント、20数年前はゲームシナリオの一部をアフレコしただけなんです。

だからシナリオの筋も設定も曖昧なことが多かっただろうに、迅速的確にキャラを掴んでいただけて……どれだけ感激してもしたりない!


舞台監督をはじめ運営スタッフの皆様も各々の仕事を着実にやり遂げてくださいました。

「中継終了」と声がかかった時の、ホッとゆるみつつも熱気に包まれた現場の空気は忘れられません。


読み合わせの日と本番当日は、キャラクターの説明やアクセント確認の要員として、私も一応現場にスタンバっていましたが、出番はなかったですね。

弁当を食べて、なつかしい関係者(ごく僅か)やはじめましてのスタッフ(大多数)とお喋りしていただけです。

なんか、すみません(笑)


最後に打ち明けますと、

TOEの舞台を計画していますと聞いた当初は(たしか去年の春でした)、正直、実現するとはまったく思ってなかったです。

「現実になるといいですねー。シナリオ? はい。是非書かせてください!」と安請け合いしたのは、実現を信じていなかったせいです。

だから、関係者の皆様の多大なる努力と粘りと交渉術と……ひょっとすると運も? いろいろな技があわさって「プロジェクト、動き出しました!」と連絡がきた時は、他の仕事とのスケジュール調整で「マジかよ! やべー」となりましたね。

腹をくくって、ハチマキしめて(いや、本当はしめてないけど)、執筆に取り組んだ次第です。

今は本当にいい体験をさせていただいたと感じています。

年齢的にもそろそろ「冥土の土産」と呼んでいい仕事の1つになったのではないでしょうか。

関係者の皆様、配信をご覧になってくださった皆様に感謝致します。



追記:

本番中に長く(10年単位で)会っていない高校時代の友人からDMが突然来ました。

彼女はテイルズオブシリーズを知らず、当然TOEで遊んだこともないんだけど、石田彰さんのファンで、滅多に拝めないお姿が降臨するということで配信を見てくれていたらしいんです。そしたら、私の名前が出てきて度肝を抜かれた、と。

石田さんのおかげで、旧交を温められた次第です。リッド、ありがとう(笑)