『文庫旅館で待つ本は』(筑摩書房)発売。

装画:Naffy 装幀:田中久子



新刊は、本と旅館の話です。

私は旅行に行く時いつも本を持っていくんですけど、

日常で読んでいた本のつづきを旅先で読むことに、違和感を覚えることがままあります。

景色も人も変わるからでしょうか。

そんなわけで、いつしか旅行の時は真新しい本、それも旅先(の気持ち)に添うであろう本をセレクトすることが多くなっています。

といっても、旅先に向かう列車の中で気持ちはどんどん変わっていったりするので、それが旅行という名の不思議なので、このセレクトもなかなか難しい作業なんですが。



この物語に出てくる凧屋旅館には、最初から〝文庫〟(書籍・古文書などを入れるくら。書庫。書籍の蒐集を目的とするもの。by『広辞苑』)を用意させていただきました。

これで心置きなく旅に出られるというものです。

「本なんて何を読んでいいかわからんよ」というお客様もご安心あれ。

文庫にはたくさんの本があってよりどりみどりなので、きっと読みたい本が見つかります。

若女将が、その人がいま必要としている本をセレクトしてくれたりもします。

行ってみたいぜ、凧屋さん!



本の話を書くと、その本を読み直せて、楽しめて、「私もがんばろ」と背筋を正すことまで出来て、非常にありがたい経験を得られます。

1粒で2度おいしい、どこかのキャラメルのようです。

それではここで、今作お世話になった名作名著をご紹介いたしましょう。

いずれも古書です。

どの時代の何版のものかは、拙著巻末の参考文献および底本の一覧をご確認ください。

現在も読み継がれている小説ばかりなので、新刊書店で買える本とこちらの古書と両方読んで書きました。

贅沢な時間でした。

今は底本のお役目を終えて本棚で休んでおりますが、また人生の折々に取りだして読むことになりそうです。


最後になりましたが、

この本を作るにあたって、筑摩書房の編集者Iさんには大変お世話になりました。

装丁は、『図書室のはこぶね』にひきつづき田中久子さんにお任せしました。扉絵に使われた紙の色を見た時の、「わかってくださってる!」という安心感と満足感がハンパなかったです。

装画は、はじめましてのNaffyさんにお願いしました。お忙しいなか、今作の登場人物や物語の雰囲気にぴったりの絵をくださって、嬉しかったです。

他にも印刷所の方、校正者の方、営業の方、皆様のプロフェッショナルな仕事があって1冊の本となりましたことを感謝し、誇りに思います。

ありがとうございました。


そして、

これから読んでくださる皆様にも「ありがとうございます」です。

フライング気味の感謝を、お許しください。