江の島の夏ちょっと手前 2021

緊急事態宣言だ、まん延防止等重点措置だ、で機会を逸していた江島神社にようやく参拝できた。

初詣なんてもはや言えない、6月の大祓も終わったこの時期に。

古いお札を納め、新しいお札をいただき、大好きな江の島の今を歩きまわってたしかめてきた。

拙著『江の島ねこもり食堂』の舞台に使わせてもらったせいか、この島(島のほう)のことはいつも近くに感じている。

観光の島だけに、ここ2年ほどの旅行業界や飲食店の苦境を思うと、心配しかなかった。



結論からいうと、どっこい生きてるぞ、江の島。

もちろんしまっている店も空き店舗の貼り紙がはられている建物もあったけど、

少なくとも営業中のお店の人達は、江の島に暮らした人々が100年以上そうしてきたように、押しつけがましさのない健やかな呼び声を、梅雨の雲間に響かせていました。

猫達も気ままにくつろぎ、ときどき鷹揚に通行人の相手をしてあげてました。

どっこい生きてる。

それは別に江の島に限ったことではなく、日本中世界中の人達が今、苦難のなか青息吐息でがんばっているのでしょう。

みんな、がんばってる。そろそろ未来の希望が見えていい頃だよね。状況と心のもちよう双方の面から。

私も知らず知らずのうちに閉塞感やストレスがたまっていたのかもしれない。

江の島弁天橋の途中で、小さい子を2人連れた30代くらいの女性とすれ違ったとき

(あ、〇〇じゃん)※『江の島ねこもり食堂』の登場人物の名前。一応伏せときます笑

って、とてもナチュラルに思ってしまった。

すぐに(いや、ここ、リアル。フィクションの人は歩いてないから)と思い直すも、

子どもの特徴(設定)含めた雰囲気がそっくりすぎて、いつまでもドキドキが止まらなかった。


〇〇は小説のエンドマーク以降の姿だった。

(ああ、2人目の子どもを産んだんだ)と私は妙にすんなり納得して、いつか書けたらいいなと思った。

厄介なウィルスが襲来し、オリンピックは1年遅れで来てもオリンピック景気はやって来なかった年の江の島の話を。

それでも生きていく半分亭のお話を。

ねこもりさんのしずかな戦いを。


それが、今の私の未来の希望です。なんて。